本物のチベタンマスティフが北京にいた!

本物のチベタンマスティフが北京にいた!

2016年9月8日木曜日

本物のチベタンマスティフはチベットと中国にはもういない。


世界の多くの大型犬種の原種とされ、古代から生き続けているチベタンマスティフは、世界の愛犬家が一度は会ってみたい、一度は飼ってみたい、と、憧れる犬種です。

ですから、戦後、ドッグショーが盛んになり、世界中に多くの種類の犬たちの性質や歴史が紹介されていくと、たくさんの大型犬の原種であるチベタンマスティフを求めて、世界中の人たちがチベットに向かいました。

しかし、特にチベタンマスティフが世界の愛犬家に注目されて、世界の多くの人に飼われ始めたのは、この20年くらいのあいだです。

これはすべての犬種に言えることですが、インターネットの普及により、世界中のどこの国に住んでいる人でも、自分の好みの犬たちを、世界中のどこの国からでも買い求めることができるようになったからです。

インターネットの普及は、世界の愛犬家やブリーダーたちの環境を大きく変えることになりました。



子犬の価格が日本円にして数十万円・・・これは、チベットや中国の地方の人たちにとっては大変な大金です。

大昔から自分たちの身近にいたチベタンマスティフの子犬が、信じられないような高額で売れる・・・この話しは、瞬く間にチベット中に広がり、多くのチベタンマスティフのブリーダーが誕生しました。

そして、チベタンマスティフのブリーダーが増えていくと、今度は、自分の犬がほかの人の犬よりも売れるように、「自分の犬は、ほかの犬とは違う、より素晴らしい犬だ」ということを示すために、ニューファンドランドなどの他犬種を交配して、より美しい混血のチベタンマスティフを作り始めました。

ニューファンドランドとの混血のチベタンマスティフは、頭が大きく、毛艶もよく、体重も65キロ以上になります。中には80キロ近くになるものもいました。

しかし、もちろん、犬を買いに来る人たちには、「このチベタンマスティフは純粋なチベタンマスティフです」と伝えました。

子犬(成犬)を買う海外の人たちも、原産地であるチベットに行って買ってきた犬ですから、それらが本物であることを疑いませんでした。

そして、混血のチベタンマスティフは世界中に渡って、純血種のチベタンマスティフとして飼われるようになりました。




チベットや中国の地方では信じられないような高額でどんどん犬が売れますから、それらの地域の多くのブリーダーが、競って、積極的に混血のチベタンマスティフを生み出し、現在は、本当の純粋なチベタンマスティフは、チベットと中国にはいなくなってしまいました。

チベットと中国に本物のチベタンマスティフがいない・・・ということは、もう地球上には、純粋なチベタンマスティフはいないということです。


中国のバブル経済のチベタンマスティフへの影響


現在、西暦2016年10月、もう崩壊したと言われている、この10年くらいの中国のバブル経済によって、極端な大金持ちが、たくさん中国に誕生しました。

彼らは、金銭感覚を狂わせ、様々なたくさんの高額のものを購入しました。

チベタンマスティフも例外ではありません。

バブル初期に1億5000万円だと言われていたチベタンマスティフ(2~4歳)の最高の犬たちでも、私は非常に驚嘆し、信じられない価格だと思いました。しかし、バブルのピーク時の3年ほど前は、最高額のチベタンマスティフが3億5000万円だという話が、中国の友人たちから伝えられました。



もうこれは現在の日本人が買える金額ではない。と思い、「どこまで上がっていくんだろう」と、世界のトップのプロスポーツ選手の年収を聞くように、ただ興味本位で、楽しんでいました。

その3億5000万円のチベタンマスティフでさえ、純粋な犬ではなく、混血のチベタンマスティフです。

「混血のほうが良いチベタンマスティフに見える」

この理由だけで、チベタンマスティフは混血だけになり、その混血の子犬たちが、中国全土に広がり、また、世界中に販売されています。

そして中国バブルの影響で、混血のチベタンマスティフの成犬や子犬が、極端な高額で取引され、高額で取引されることで、まるで、その犬たちが純血種のチベタンマスティフの中でも素晴らしいトップの犬であるかのような錯覚を人々に植えつけました。


本物のチベタンマスティフが、中国・北京に生きていた。


2016年1月、私は、中国の友人に誘われて、中国の犬たちを視察に中国・北京に行きました。

中国は、西はパキスタン、トルコメニスタン、カザフスタンなどの中央アジアの国々と陸続きになっています。また北にはモンゴルがありますが、ロシアともつながっています。

ですから、もしかしたら、中国でも、CAO(セントラル・アジアン・オフチャルカ)や、ブーリークッタなどが飼われていて、それらを見れるのではないか・・と思って、楽しみにしていましたが、やはり、本物のチベタンマスティフを見たい。と、強く思っていました。

しかし、そのときは、中国に、純粋なチベタンマスティフがほとんどいない。などということは知りませんでした。

そうして、友人の中国人の谷(コク)さんから、中国の犬の世界で有名な王(オウ)さんという方を紹介してもらって、中国滞在期間、ずっとそのオウさんがガイドを引き受けてくれて、一緒に行動していました。

この王さんは、闘犬が好きで、日本からたくさんの土佐犬を購入し、中央アジアの様々な国から、CAOやブーリークッタを買ってきて、自宅の庭に巨大な犬舎を作り、たくさんの犬たちを飼っていました。

私は王さんの自宅に招かれて、彼のたくさんの犬たちを見せてもらい、「やはり中国にもCAOがいた!」と思い、興奮し、忘れないように、犬たちを、しっかり目に焼き付けていました。

その王さんと、お茶を飲みながら話していたとき・・・

「中国のチベタンマスティフを見たいんですけど」と申しましたところ

「中国には、純粋なチベタンマスティフと雑種のチベタンマスティフがいます」と言われました。

「あ~なるほど・・・そういうこともあるだろうな・・・」と、軽く思い、「もちろん、純粋なチベタンマスティフが見たいです」と伝えました。

そのとき私は、「純粋なチベタンマスティフの犬舎もたくさんあるが、ドッグショーで勝つためや、見栄えのいい子犬を作るために、他犬種を交配して、純粋ではない混血のチベタンマスティフを作っている、いかがわしい犬舎もある・・」というような意味で捉えていました。

しかしそうではありませんでした。

王さんの話しでは、本物の純粋なチベタンマスティフは、チベットと中国全土で、この北京の犬舎のみ。ということでした。

え・・・??

・・・・チベタンマスティフというのは、そんな状況になってるのか・・・・本当かな・・・・

まあいいだろう・・・オレは、今まで、さんざんチベタンマスティフをネット上で見てきたから、犬を見ればわかる・・・・

半信半疑のまま車に乗り込み、谷さんと王さんと、王さんの友達の黄(コウ)さんの4人で、そのチベットと中国全土で唯一の純粋なチベタンマスティフ犬舎に向かいました。

そうして連れてこられた犬舎が、北京市内にある、ルイ(本名)さんという方の自宅兼犬舎でした。

そこには、100頭のチベタンマスティフがいました。

超大型犬のチベタンマスティフを、中国の首都である北京市内で100頭飼っている。ということで、敷地と建物で、10億円だということでした。

明らかに私が今までネット上で見てきたチベタンマスティフとは違っていました。

私がネット上で見てきたチベタンマスティフは、毛がモコモコしていて、体が大きく体重60~90キロくらいで、ニューファンのような犬でした。

あるいは、ライオンのタテガミのように、首の周囲に長い毛がある犬などもいました。

この犬舎の犬たちは、大きな犬でも体重が50~60キロくらいで、動きが俊敏で、とても攻撃的でした。



チベット・中国で唯一の純粋なチベタンマスティフ犬舎


私たちは、1時間くらいかけてすべての犬たちを見せてもらったあとに、ルイさんとお茶を飲んで話していました。

そこで、チベットと中国には、もう純粋なチベタンマスティフはいない。という話を聞かされました。

ルイさんの話しでは、チベットと中国の99%のチベタンマスティフは、もう他犬種がたくさん交配されて、伝統的な犬ではなくなっている。ということでした。

特にこの20年間は、インターネットの普及で、マーケットが世界になったために、子犬を売って金を得ることだけしか考えていないブリーダーだけになって、体重60キロ~90キロのチベタンマスティフばかりになったそうです。

これらの犬たちは、ニューファンドランドやコーカサスシープドッグを交配しているそうです。

やはり、どこの国でも、自分の犬をより魅力的な犬にするために、また自分の子犬がよりたくさん売れるように、他犬種と交配する人がたくさんいるようです。

私は、犬の輸入と輸出の仕事をしていますから、日常的に、世界各地の人から、このような話しを聞きますが、土佐犬やピットブルなど、闘犬を目的として作られた犬種は、他犬種と交配して、より強い犬を作ってもいいと思います。しかし純血種の場合は、同じ犬種の違うタイプの犬を交配させて、変化させたほうがいいと思います。

ましてチベタンマスティフは、CAO(セントラル・アジアン・オフチャルカ)と同じで、太古の昔から自然交配で完成した犬種です。

そしてさらに、その自然に完成した神秘的な犬種は、現在の多くの大型純血種の祖先でもあります。

その重要な犬種を、たくさん金がほしいという、ただそれだけの人間の欲望によって、混血の犬にしてしまっている・・・

これは、大変な事件です。


ルイさんは、太古からの自然交配によって完成した純粋なチベタンマスティフにこだわり、純粋なチベタンマスティフだけを交配させ、どんなに老犬になっても、すべての犬を一生飼い続けているために、いつの間にか100頭以上になってしまいました。

広大な広さの犬舎ですから、飼育を手伝ってくださる人が必要です。

ですから、その人件費と、犬の食事や設備に必要な費用は、年間1000万円を超えるそうです。

しかし、多くの国から、純粋なチベタンマスティフを求めて、たくさんの人たちがやってくる。ということでした。

これから紹介する動画の犬たちは、すべてルイさんの犬舎の本物のチベタンマスティフです。

中国政府と一緒になって守らなければならないような太古からの純血のチベタンマスティフを、ルイさんは一人で守り続けていらっしゃいます。